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痛かったらすぐにいってね


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たまには真剣にと真面目に授業を聞いていたのだが急に頭痛が来て集中力が途切れる。長年の経験からこのパターンはやばいやつだとすぐに鎮痛剤を冷め切ったマックのカフェラテで流し込む。あぁ、ちょっと遅かった。数分後には頭を上げているのも辛くなってきた。鎮痛剤が効いてくるのにどれだけ早くても20分はかかるだろう。次第に頭痛が肩に伝って腕が痺れてきた。手がだるくてシャープペンが握れない。家に帰るにしたってだるすぎて動けない。倒れる前になんとかするというのが一人暮らしの初歩ルールであるためすぐさまネットで近くの整体を探して予約する。一人で長く暮らすと一人で出かける恥ずかしさやつらさを、いつからか、しないつらさのが上回るようになる。中国に来てまで一人で整体を予約して一人で行くことになるなんて思いもしなかった。

ネットで予約をしたものの、空きがあるかどうか一度電話してくれと書いてあったので授業の終了とともに電話を入れる。電話は顔を見て話すよりもはるかに聞き取りにくく、こっちが外国人だということもわからずすごいスピードで話されるので苦手だったが回数を重ねているうちに慣れた。

今日行きたいのだが空きはあるかと聞くと、探すから待っててねと言われ6時からならいいけどそれでもいい?と言われたので6時に行く約束をした。名前を聞かれたので告げると「あぁ!」と言われ、わたしは自分から「そうです、外国人です。」と笑った。電話を切る時にシーユー!バイ!と言われたが再见と返した。口からパッと英語が出てこなかった。

やっと薬が効いてきたので一旦家に荷物を置いてからお店へ向かう。近くとはいえ初めて行く場所に行くのは怖いしドキドキする。地図アプリを凝視しながら目的の場所を見つけた。想像とは違いマンションの17階の一室だった。エレベーターに乗って17階を押したが止まらずに過ぎた。あれ?と思い再び1階まで戻るとエレベーターの横に偶数階にしか止まりませんと書いてあった。

お店を見つけ中に入り、さっき電話した…というと「韓国人ですか?」と聞かれたので日本人ですと答えるとニコッとされた。こっちにきてから日本人ですか?と聞かれた経験があまりない。

温かいお茶を入れくれたので座って飲みながら待っていると飲み終わったら部屋に入ってねと言われる。向こうもわたしがどれくらい理解しているのか探り探り、身振り手振りを交えて服の着方の説明をしてくれた。着替えて待っていると身長の高いかっこいい男の人が準備できましたか?と入ってきた。

どこが痛いのか聞かれたどたどしく説明すると施術が始まった。これまで受けた接客の中で断トツに丁寧な話し方と気づかいでわたしも安心した。肩を触った瞬間に「なにごとですか!?仕事してるんですか?学生ですか?」と言われた。日本で施術を受けた時のお兄さんも同じ反応をして同じ質問をしてきたことがあるので笑った。「学生です」と返すと急に話し方がフレンドリーになった。ちなみに日本で施術してもらったお兄さんにはそのあと「仕事にも人生にも疲れた30歳OLの体してるよ」と言われた。確かに当時は仕事にも人生にも疲れていたし30歳OL並みに働いていた。

「痛かったらすぐにいってね」

何度も言ってくれるのだが痛すぎて言葉が出ない。親知らずを抜かれるときと同じレベルで痛くて思わず体に力がはいる。

「緊張しないで!リラックスして!じゃないともっと痛くなるから!」

中盤でお兄さんは火が出ている鉄のスタンプみたいなのを持ってきた。お灸?みたいなやつだと思うのだがわたしの場合は頭痛がひどいので額に当てられることになる。

あまりに怖いので不服そうな顔をしていると「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ」と言われた。熱すぎて顔の皮膚がなくなるかと思った。痛すぎて痛いという余裕もなかったのだが相当痛そうな顔をしていたのか「もうやめよう」といってやめてくれた。

そのあと骨格矯正をしたのだが背骨と骨盤が曲がりすぎていて激痛だった。首と腰を捻られた時に自分の体から出たと思えないくらい大きな音でバキバキバキっとなったので恐怖心すら生まれた。音が大きいほど歪んでいるらしい。

1時間半ほどの施術が全部終わるとお姉さんがまたあったかいお茶を出してくれた。「ひどくなる前にまたおいで」といわれた。

家に帰って横になると体がほぐれたためか疲れがどっと吹き出して動けなくなった。以前ほど忙しい生活をしているわけではないし毎日楽しく生活しているので疲れは溜まってないと思っていたが、緊張感をもって生活しているから気づいていないだけで体には疲れが溜まっていたのかもしれない。その後急に呼吸をするだけで胃が痛くなるという症状がではじめたのでネットで検索すると、ストレスで空気を飲み込みすぎると胃に空気が溜まりすぎてなる症状らしい。ストレスがあまりないタイプだと自分で思っていたし最近痩せないくらいしか悩みがなかったのだと思っていたがストレスもあったのかもしれない。自分ではよくわからない。

無理をして生活すると必ず倒れる。無理をすることはできるけど倒れても一人で暮らしているので頼る当てがいない。だからわたしは無理はしないで疲れたと思ったら自主的に休むことを絶対条件にしている。だから本格的に倒れた経験はあまりないのだが、なんだかんだ自分の体の変化に気づけていないかもしれない。頭痛で手が痺れてシャープペンが握れないなんて21歳の体じゃない。

体であっても精神であっても本当に痛い時はとっさに痛いと言えない。痛いと言える余裕すらない。それほど痛くなる前に少しでも痛かったらすぐに言わなきゃならないと思う。それは悪いことではないしわたしの周りの人にもそうあってほしいと思う。少しでも痛かったら力になりたい。

そして本当に痛くて痛いと言えない人たちが周りにいたらいち早く気づいて「もうやめよっか」と言ってあげたい。無理して続けることが絶対の正解ではない。やめてもいいってことを伝えたい。

家に帰って倦怠感と胃の痛みに耐えながら「明日は学校を休もう」と思った。どうせ夜はまた韓国語に囲まれて6時間立ちっぱなしだし、午前中はリラックスしようと決めた。そして深い眠りに就き目を覚ます昼の1時を回っていた。