親友の悩み


前学期で仲良くなって以来、いろいろな韓国人との繋がりを持たせてくれたり家族や彼氏に会わせてくれたりなにからなにまでお世話になってる親友はもう大学には来ていない。おばあちゃんと従姉妹がこっちで生活していることと、第二専攻が中国語なこともあり上海に来た。(韓国のほとんどの大学は二つの学科を専攻するらしい。あと大学に入ってからもすごい勉強が大変そう、そりゃ賢いな…)だが大学の中国語の授業の適当さに「これじゃあかん」とこっちの大学をやめる決意をし最近は家で一対一の家庭教師をつけて勉強している。学校に行かないという選択をとり友達が全くいなくなった親友からはお金ができると高頻度で連絡が来るため少なくとも週2で会っている。最も大学に通っているわたしも片手で十分に収まるほどの友達しかいない。片手というかピースできるくらいしかいない。

彼女は本当に突然大学をやめると言い始めた。当時わたしが先に大学を辞めて中国でインターンシップをしようとして動いていたのだがなんだかんだお金がかかることと今ある家の契約を切ったりビザのために一時帰国しなければならないこと、当時仲良くしてくれていた日中ハーフの女の子に「なんでそんな働きたがるの?どうせ日本に帰ったらバイト三昧のさりいの生活なんて見えてるんだから半年くらいダラダラしなよ。中国語できないからとかせかせかキビキビするのもいいけどさりいはダラダラすることを覚えたほうがいい」と言われたことや、仲介手続きをしてくれる会社の担当の方のメールの返信が毎度若干遅いことに不信感を覚えて辞めた。それ以外にもいろいろとインターンシップに踏み切れない要素があったのだが踏み切ろうと思えばなんとでもなったのでそんなにやりたくなかったんだと思う。

当然その時は親友に相談していて「わたしインターンシップやるわ、この大学いてこの生活しててもわたしの中国語が死ぬ」と言ったら「ハァ?そしたらわたしクラスに友達いなくて孤立死じゃん!!!やだ!!ダメ!!…でもさりいの言う通りだわ…この大学にいたら中国語が死ぬ」と言ってなんだかんだ応援してくれた。その後わたしはインターンシップをする考えをやめ、彼女は大学に通うことを辞めた。結果、全く逆の立場となることになった。

彼女のかわいいところは「まっすぐ」なところであり「お前漫画かよ!」ということがよくある。この前タクシーでiPhone6sを拾ったのだが警察に届けずまだ持っているらしくそれについて「怖い!捕まったらどうしよう!電源だけは切った!!」「拾ったこと誰にも言わないでね!」といっていた3分後に仲良しのお兄さんに「携帯拾った時ってどうやって売るの?それかパスワード解除して使えるの?」と聞いて「なんで?」と聞かれ「別に…気になるじゃん…」と答えすぐにお前拾っただろ俺にくれとバレていた。わかりやすすぎるしその会話は漫画でしか見たことがない。そのお兄さんは最近携帯を盗まれたばかりだったのでありとあらゆる方法でその携帯を譲ってもらおうとして結果2人は喧嘩をしてそれ以来口をきいているのを見ていない。27歳のお兄さん相手にばかばかしいのだが(というかその人もかなり問題あり)そこらへんもなんでやねんという感じである。喧嘩の仕方は小学生みたいである。「向こうが最初に汚い言葉を吐いてきたからわたしも向こうにその言葉を返してラインをブロックした」らしい。どっちが悪いか聞かれたのだがどっちもアホすぎて理解できないと言ってある。その後彼氏に「あげるからね!待っててね!」と愛嬌満点で電話していた。暇さえあれば彼氏とテレビ電話をしている。

昨日久々に(といっても一週間ぶり)に彼女に会ったのだがお互い友達もおらず話の種もないため基本的にはいつも顔を合わせては「ひま」「金ない」「遊びたいけど遊ぶとこがない」「眠い」という決まり文句を並べたあと来週のドラマの予告で誰かが死ぬっぽい描写があったけどそれは誰かとか最近買いたい服があるんだけどSを買うかMを買うか、どのメーカーのコンシーラーが一番いいかなんていうことを話す。昨日はその流れを一通り終えたあとに「漫画好き?」と聞かれたのでワンピースとかは読まないけど少女漫画は読むと答えたら一緒にこれやろうぜと乙女ゲーを勧められた。韓国版の乙女ゲーがあることに驚くと同時に彼女が暇すぎてそんなことになっていることに爆笑した。どう見ても乙女ゲーをやるようなタイプではない。「魅力ポイント(ラブポイントみたいなやつ)たまんないですけど!金出さなきゃなんないの!?金かよ!金を要求してくる男なんてろくな男じゃないな!」と言いながら主人公キムサラン(自分の名前はなんかキモいから嫌らしい)の髪型をコインで買うか買わないかに頭を悩ませていたので隣でずっと爆笑していた。1時間ほど熱心に乙女ゲーをしていたのだが突然「ハァ…?」といい携帯を手放した。「誰とも何も起こらず終わった…」。どうらや魅力ポイントが思うように溜まらず全員友情エンディングを迎えたようだ。わたしは爆笑していたのだがふと彼女がつぶやいた。

「わたし何やってんだろ…」

あまりの落ち込みぶりに爆笑が止まらず「さっきポニーテールじゃなくてウェーブヘア選ばなかったからじゃないの?」と茶化すわたしだったが彼女は声のトーンを上げることなく「中国まできて毎日なにやってんだろ、バカみたい」と言った。

「わたしやっぱり学院通おうかな…語学学校みたいなとこ…バイトとかももっとしたほうがいいのかな、もうわかんないわ」

わたしはすぐに笑うのをやめた。なんだかんだ毎日起きて大学に行き外に出て動いている私とは違いほとんど家にいる彼女は多分わたしよりもっと追い詰められている気がした。わたしは中国語はできないけどなんだかんだ毎日韓国語に触れているのでプラマイゼロか〜と自分を納得させているが彼女の場合は家族と住んでいるので一人暮らしの学びみたいなものもなければ家にいる間は無条件で韓国語、わたしと会っても韓国語なのである。

彼女が大学に行くのを辞めると言った時その辺りのことについて話したことがある。多分しんどくなるよ、と。彼女は「中国語を勉強したくて中国にきたんだから別にいい。友達はさりいで十分だし。さりい以上仲良くなる友達見つけることもなさそうだし。」とのことだった。彼女の決めたことなので「そっか、じゃあ息抜きに旅行にいっぱい行こうね」と言った。

彼女は韓国に帰ればもうすぐ1000日記念日を迎えるめちゃくちゃ優しい一個上の彼氏もいるし、日本旅行が趣味の仲良しのお父さんとお母さんもいるし(お母さんめちゃくちゃ美人)友達もめちゃくちゃたくさんいると言っていた。春休みに一時帰国した時には毎日友達や彼氏といる写真が送られてきて楽しそうだった。

彼女といるときは楽しいのだが(帰ってきて久々に会った時嬉しすぎてテンションがおかしくなった)上海は本当にすることがないので街に出てはいるものの韓国に一時帰国している時の彼女のように楽しんでいるかというとそうではないと思う。

その後、「将来のこと考えてんの?」と聞いたら「わかんない、免税店とかで働けたらラッキーなのかなーくらいにしか思ってない」と言っていて「わたしも」と答えた。同級生なので周りが就活に苦しんでいるのを間接的に見てびびっている図もわたしの同じで2人で「なんだかねー、なんとかしたいけどなにをすればいいのかねー」とぼーっとしていた。

「何かしなきゃと思ってるのになにもしたくないしとにかく眠い」と言っていた。わたしは「それな」と返したが心からの同意だった。

それからわたしたちは来月の韓国旅行の話をした。中国国内旅行も考えたのだが冷静にどっちのが楽しめるか考えた時に2人とも「韓国」で一致した。彼女の実家に泊めてもらい彼女の車で彼女の運転で移動する。大学の文化祭に連れてっていってくれて、彼氏や友達にも会わせてくれるらしい。やりたいことを聞かれたので「映画を見るのと本屋に行くのはしたいけどあとは任せる」と言っておいた。わたしもめちゃくちゃ楽しみだが彼女もめちゃくちゃ楽しみにしているようだ。

わたしたちの悩みは解決しないし彼女の悩みの手助けになってあげることもできなくて、これまでの感謝をどう彼女に示したらいいのかわからなくて偶にどうしようもない気持ちになることがある。けどわたしはこんな悩みをダラダラしながら話せる友達を持てたことが素直に嬉しい。なんの損得もなく、将来の役に立つとか就職に有利そうとかそんなこと全く一ミリも関係なく、言語を学ぶってこういうことができるようになることなんだと思っている。